「適性検査」の形態
個人認証が可能。 古くから利用されてきた、紙による検査
紙の筆記試験(ペーパーテスト)による検査から始まった適性検査だが、時代の要請を受け、その形態も変化。現在では大きく分けて2種類の検査形態がある。
一つには冒頭にも触れた適性検査がスタートした当初からあったペーパーテストである。「『適性検査』の種類」の項でも触れたが、テスト種類はさまざまで「はい」「いいえ」で回答をするものから、主語を設定し、続く文章を完成させるもの、他にもテーマを設定し、小論文を書かせるものなど種類は多い。ただし、第一次の採用選考でスクリーニングを目的に使用する場合、多肢選択型――マークシートによるものが多い。
次に述べるWebによる適性検査との違いは、場所を設定し、監督官を置き、検査を行うことで、不正が行われにくいという大きなメリットがあることだ。
人事の時間・人的パワーを軽減する、Webによる検査方法
一方、現在の主流になりつつあるものとしてWebによる適性検査がある。これはそもそもIT化が急激に進むなか、研究者側でコンピュータ処理の可能性が期待され、研究されていた背景もあるが、一番にはネットによるエントリーが可能になったために一企業に対する応募者が激増、現実的に面接できる人数まで効率的に絞り込むために、実務上求められたことによる。実施方法としてはパソコンがある場所であれば、時間も場所も問わず受検でき、監督官も必要がないところに特徴がある。
そのため、このWebによる検査は適性検査実施会場や監督官の設定を含め、実施における時間的・人的パワー面において、人事担当者の負担を大幅に軽減するものとなった。また、コスト面でも筆記試験方式に比べて抑えられるため、多くの企業が導入すると共に、多くの適性検査提供会社がサービスメニューに組み込んでいる。
しかし、Webによる適性検査による大きな問題は“個人認証”が難しいことである。実際に、代理受検や複数人数の補助による受検などの不正行為が報告されている。そうした危険性があることを前提に、あくまでも“応募者の絞り込み”のために使用、という企業もあるようだが、適性検査の本来の意味を考えた場合、Web検査の結果をどう捉えるかは十分に注意をしなければならない。一つの策として、不正の可能性を認識した上でWebテストによる絞り込みを行った後、本当に求める水準の能力や性質を有しているか、改めて紙による筆記試験を行っている企業もあるようだ。
ただし、先述したようにWebテストは利便性などの点で優れている。と同時に、応募者側から見た時にも、志望企業の遠方に住んでいる場合、海外からの応募の場合など、居住地に関わらず、応募者に受検の機会を提供できるという意味では大きな意義・価値があるものであることも事実である。
Webテストでありながら、個人認証を行える テストセンター方式・インハウス方式
このWebによる検査の弱点を補う形として存在するのが、テストセンター方式と自社のパソコンで実施する方式(以下、便宜上「インハウス方式」と表記)である。実際にこれらの方式を提供しているのは特定少数の適性検査提供会社だが、Webによる検査でありながら個人をしっかり認証できるため、注目度は高い。
まず、テストセンター方式だが、これはSPI2で知られるリクルートが提供するもので、全国の主要都市にテストセンターを設置。応募者自らが予約を行い、身分証明書を持参して受検するものである。企業にとっては先述したWebによる検査と同様、実施会場・監督官などが不必要でコストを抑えられるだけでなく、個人認証ができることから、替え玉受検などの不正を防止できる手法として企業・受検者双方にとって信頼感・納得感が高い。また、受検者側では、会場が“主要都市”となるため、一部の受検者に対しては多少の不便が出てしまうが、選択できる実施日・時間が幅広いため、受検の機会が広がる。
次にインハウス方式だが、これは企業内でWeb検査を実施するものである。複数企業がサービスを提供しているが、いずれも採点時間は短く、会社説明会・適性検査・面接を同日に行うことが可能。ただし、実施会場の広さやパソコン台数によって受検できる人数が決まってくるため、応募者の多寡によって実施日の増減が出てくることになる。
また、採点方法は適性検査提供会社が行うもの、自社で行うものなどがあるが、自社で行う検査の場合、検査から採点までをパッケージ化したソフトウェアを購入。経年のデータ分析まで自社内で行えるため、自社内でデータ管理できる安全性の他にも採用の用途以外の適性検査の活用面でコスト削減ができるというメリットがある。しかし、集計の手間がかかるだけでなく、結果の読み取り、データの集計・分析などの技術が必要であるため、人事担当者の知識や技術・経験などが求められる。
それぞれに特徴があり、どの形態を導入するかは企業の考え方次第だが、企業としてのコストや人的パワー、応募者への機会提供と利便性など、総合的に判断して選択したいものである。
メリット | デメリット | |
ペーパーテスト |
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Webテスト |
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テストセンター |
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インハウス |
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