適性検査とは
(1)適性とは何か
●適性は「未来」に向けた潜在能力
「適性」は、「彼は経理のような机に向かって細かな事務処理をするのには向いているけれど、多くの人と接する営業にはどうも向いていないようだ」といったように、「向き・不向き」という言葉で表現されることが多い。例えば販売職が未経験の人でも、適性があれば入社後すぐに販売実績を上げることもあるので、仕事のマッチングを図る上で非常に重要な要素である。
しかし「適性検査」における適性とは、単に職務・職場の特性・特質とマッチしているかを示すものではない。重要なのは、人材が職務要件を獲得するための「可能性」や「将来性」を持ち合わせているかどうかである。いわゆる「能力」が、個々の人間がそれまでの生活の中で蓄えてきた客観的に認めやすい力であるとすれば、「適性」は、今後の能力の伸びを保証する「未来」に向けた顕在能力(資質)と言うことができるだろう。
能力の高い人でも、仕事において、周囲が期待するように成長していくためには、仕事に対する興味・関心が不可欠だ。このように、「適性」は社会に出てからその人がどのように伸びていくかという点で、重要な役割(カギとなる情報)を果たす。
実際、面接試験などで重要視されるのも、「将来に向けて伸びる力があるかどうか」という適性である。採用した人の現在までの能力は学業成績などを見るとある程度判断が付くが、将来性といった資質面を判断するには、科学的なアプローチによるデータが必要である。そのため、面接による人物調査に加えて、資質面を測る適性検査が重要な役割を果たすことになる。
このような特性を持つ適性は、下記の通り、大きく三つの要素に分けて整理される。これらの要素を踏まえて、総合的に人物の評価、判断を行う必要があるのだ。ただし、適性検査の結果はあくまで評価・判断のためのツールであり、その人物の人間性や個性を表す絶対的なものではない点に注意を払う必要がある。
1.能力的側面(職務適応) | 職務を遂行するために必要な知識・技術を獲得するための「基礎的な能力」 |
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2.性格的側面(職場適応) | 職務や職場風土に適応できるかどうか「情緒的・性格的な特性」 |
3.態度的側面(自己適応) | 経営ビジョン・事業内容・マネジメント方針などに適応するための「動機・興味関心・価値観」 |
(2)適性検査とは何か
●性格検査、パーソナリティー検査など、適性を測るさまざまな検査の総称
「適性検査」には、実にさまざまな種類がある。性格検査、パーソナリティー検査、能力検査、学力検査、組織適性検査、職業適性検査、コンピテンシー検査、ストレス適性検査などが代表的だが、近年はこれらを総称して「適性検査」と言うことが多い。企業で利用される場合、新卒学生の「採用選考」場面で使われるケースが最も多くなっており、一般的に「適性検査」と言うと、新卒採用における人事アセスメントツールとして理解されている。ただ前述したように、現在では採用選考だけに限らず、幅広い領域に活用されている点に留意したい。
なお、採用選考では適性検査のほかに、「応募書類」「論文」「面接」などが併せて実施され、適性検査の結果と補完し合うことによって、より深い人物理解と適切な判断が可能になる。
適性検査 | 知能、能力、専門性、パーソナリティー、意欲・態度、職業に対する興味・関心 |
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応募書類 | 志望動機、仕事への興味・関心、社会常識 |
論文 | 論理性、表現力、語彙(ごい)力、倫理観 |
面接 | パーソナリティー、意欲・態度、高感度、やる気、判断力、柔軟性、洞察力 |
(3)適性検査の「目的」
●人材に関する評価の客観性を高め、多様な人材情報を担保する
適性検査を実施する目的は「採用選考」に限らず、「適性配置」「昇進・昇格」「能力開発」をはじめ、「経営人材の選抜」「グローバル人材の選抜」や「職務スキル・能力の見える化」など、非常に幅広い。適性検査を実施している企業の評価を聞いても、「昇格した人材が、その役職で不適格になるケースがない」「選抜、昇格、昇任などの基準を一本化できた」といったように、人材に関する評価の客観性を高められ、人事部門として人材情報が飛躍的にアップしたという効果・効用をうたう声が多い。
適性検査は「人」に関するデータを数量化し、統計的に分析していくことに大きな特徴がある。このような適性検査を利用することによって、以下のようなメリット(効用)が挙げることができる。
- 人物理解の枠組みの獲得
- 人物評価の視点の多角化
- 人物評価の客観化
- 人物データ収集の効率化
- 被選抜機会の公平化、被選考者の公平感・納得感の確保
- 組織、集団の人的資質状況の診断
- 人事データの保管、検索、伝達
- 選考システム、人事システムの診断と設計の支援