適性検査の活用(3)能力・キャリア開発
(1)能力・キャリア開発における「役割」
●適性検査結果をフィードバックし能力・キャリア開発につなげる
そもそも適性検査は、人事評価のためのツールとして開発されたが、能力・キャリア開発の側面でも有効に活用されている。自分の強み・弱みだけでなく、態度・行動様式を見直すための教育研修などでも効果を発揮し、検査結果を受検者にフィードバックすることで、自己理解・相互理解の役に立つからだ。また、教育担当者が検査結果を利用し、研修受講者一人ひとりの特徴を事前につかんだり、受講者の特性を考慮しながら対応の仕方を変えたりすることは、教育研修の効果を高める上で非常に効果的である。他にも、キャリア選択に当たって行われる面接の資料として利用されたり、適応上の問題に直面する社員の診断情報としてカウンセリングルームなどで参考にしたりと、多様な活用が見られる。
(2)能力・キャリア開発における活用の「ポイント」
●結果のフィードバックは、丁寧に理解させることが大切
適性検査は能力、性格、指向などの比較的安定した個人差の診断指標であるが、結果のフィードバックによって、能力・キャリア開発の効果も期待することができる。その際、趣旨の説明と同時に、検査結果の見方を誤ることのないよう、丁寧に理解させることが必要だ。伝えるべきポイントは、「結果は当人の人格全てを診断し決めつけるものではなく、あくまで一面を表すものであること」「結果は良し悪しを問うものではなく、仕事を進める上で強み・弱みを認識するためのものであること」「自分の特徴を理解させ、どのように行動を変えていけばいいのかを考えるためのものであること」の3点である。要は、適性検査は自分を振り返ってみるための一つの“刺激材料”であり、詳細にこだわり過ぎずにゆったりした気持ちで受け止め、能力・キャリア開発につなげるために、建設的に考えるよう誘導することが大切である。
とりわけ、管理職候補者層など、処遇の是非が差し迫った状況下で行なわれる場合や、自己受容ができにくい若年層では、丁寧さが必要となる。より掘り下げた解釈をさせたい場合は、受け入れやすいテスト版を選択し、研修や面接などフィードバックプログラムを充実させることが望ましい。検査結果の提供のみで、対象者の自己分析にもに委ねておくような場合は、十分消化できないケースが懸念される。