「適性検査」提供会社の選び方
開発会社・海外ツール翻訳会社・コンサルの一環…
適性検査のサービス形態には様々なものがある
どの「適性検査」を使うのか、検査の種類を選ぶ重要性もさることながら、世の中にごまんとある「適性検査」提供会社を選ぶことにも慎重さが必要であることはいうまでもない。
ただし、適性検査を提供するのは、適性検査を専門に研究開発し、提供している会社だけではない。例えば、コンサルティング会社がサービスの一環として提供していたりするからだ。そこでまず、「適性検査」のサービス形態について理解しておきたい。適性検査の提供には、以下のような方法がある。
- 1) 学問的な基盤を基に人事アセスメントの技術を蓄積し、課題解決支援の一環として
- 2) 開発機能は持たず、純粋な出版物の一つとして頒布
- 3) 海外ツールを翻訳・翻案
- 4) コンサルティングや教育訓練のサービスの一環として
- 5) 求人メディアの付帯サービスとして
多くの会社はこの1~5を複合的サービスとして提供することが多いのだが、そこで問題となるのは、「では一体、どの会社を選べばよいのか」ということだ。上記のサービス形態の分類は適性検査提供会社のバックグラウンドを知っておくうえで大切だ。しかし、最も重要なのは、その会社が提供している検査が、自分たちの検査目的に沿っているかどうかを見極めることだ。
人の人生を左右し、個人情報を扱う適性検査
「倫理観」のある会社かどうかがポイント
適性検査提供会社を選ぶ際、適性検査の内容以前に確認しておきたいことがある。それはその会社が、“倫理性の原則を自ら定め、順守”しているかどうかということである。人事採用における適性検査は、言うまでもなく受検者の将来に大きな影響を与えるものである。また、パーソナリティをはじめとした個人特性を測定することもあるため、プライバシー保護の観点からも提供会社がどの程度の倫理観を持ち合わせているかが、会社を選ぶ際の重要な判断基準となる。
とはいえ、倫理観の有無を判断するのはなかなか難しいので、少なくとも以下のような会社は避けることを心がけたい。
- 信頼性、妥当性、標準性の研究に対する努力を払わない、あるいは不足している
- 個人情報を扱うための管理体制が整っていない。テスト結果の保管がルーズである
- 受検者のデータを不必要、あるいは興味本位に加工して提供する
また、適性検査はその社会的意義や受検者の立場や心情を思いやって商品開発・サービスが行われるべきものであるため、受検者が適性検査にかける時間や労力を汲み取っているかどうかも一つの指標となるだろう。ただし、ユーザーと受検者、双方の利益をかなえるのは難しいことである。そのため、ユーザーの利益に反する場面も出てくるだろうが、適性検査提供会社としては受検者重視が正しい姿勢といえる。ユーザーにいかにわかりやすく、使いやすいサービスを提供しているか、こうした視点は前者の条件がクリアになった段階で考えるべきである。
心理測定・採点処理サービス・コンサルティング
技術3つの観点から適性検査提供会社を見極める
ではさらに、より具体的に適性検査提供会社を検討していくことにする。簡単にいえば、各社ごとに開発技術に差があるため、それを見極めればよいのだが、実際に質問冊子や報告書見本、パンフレットを見ただけでは判断しづらい。場合によっては、販促ツール作りには長けているが、開発力が低いという会社もあり得る。
そこで、会社の良し悪しを判断するポイントして、(a)心理測定技術の高さ、(b)データプロセッシング技術(採点処理サービス技術)の高さ、(c)コンサルティング技術の高さを確認するのが適切である。以下、各項目について解説することとする。
(a)心理測定技術の高さ
そもそも適性検査の基幹技術とは、「問題を執筆する技術」と「収集されたデータの解析技術」という心理学の一領域として確立されているものである。さらに細かくいえば、「問題作成」「テスト理論の実践応用」「データ解釈技術」ということができるだろう。
ただし、適性検査提供会社を選ぶ時の心理測定技術上の指標としては、「テスト開発」に加え、「品質維持のための技術」があることも忘れてはいけない。というのも、環境変化や時代の趨勢に合わせて、常に内容を改善・改訂していく努力が求められているからだ。
そうしたことを知るためには、まずは「研究開発への投資状況」を確認するのがわかりやすい。他にも、開発スタッフの体制や研究成果、外部に委託しているのであれば、誰がどれだけ深く、どの段階までその研究に関わっているのか、運用段階に入った後の品質維持に対する体制は整っているか、海外のテストを翻訳・出版している会社であれば、日本用にローカライズするための研究体制はどうなっているか、テストサービス会社の測定技術力はどれだけあるのか、などを確認することが求められる。
(b)データプロセッシング(採点処理サービス)技術の高さ
採点処理サービスというと、どうしても採点にかかる所要時間ばかりに目が行きがちであるが、それ以前に重要なのが安全性とバックアップ体制である。
テストデータを処理するに当たっては「採点ミスがないこと」は当然のことながら、個人情報を取り扱っているため、「データの機密性の確保」が求められる。また、データ処理のトラブルが起こった際、どのようにバックアップ体制が組まれているのか。システムや運用パワー、また、人手による作業の質の違いなども確認しておきたい。
また、適性検査と共に採点マニュアルを提供し、ユーザーが採点処理を行うタイプのサービスも出てきているが、こうした会社の場合はデータの蓄積量やそのデータ分析による品質維持に対する努力がどれくらいなされているのかを確認しておく必要があるだろう。
(c)コンサルティング技術の高さ
適性検査とは、いわば“課題解決技術”の一端を担っている。そのため、単に結果を出すだけで終わらせてしまうのでは意味がない。そこでいかに結果を活用するかが重要になってくるのだが、適性検査提供会社を選ぶ際には、活用ノウハウをどれだけ提供してくれるかが一つの指標となるだろう。具体的には、1)妥当性データの提供、2)活用モデルの提示、3)活用後のデータ分析の支援、4)活用に当たってのアドバイスである。これらは、テスト結果の開発マニュアルや報告書、映像資料による解説、セミナー、営業担当者による情報提供の有無や充実度を知ることで判断ができる。
以上、適性検査提供会社の選び方においては、「倫理観」があることを前提に、「心理測定技術」「データプロセッシング技術」「コンサルティング技術」の高さを確認することで、ある程度の絞り込みができるといえるだろう。